ユーザー導入事例

製造リードタイム半減を目指しFLEXSCHEを導入
FLEXSCHEで立案した計画と現場のずれをなくして目標達成を図る

株式会社イースタン様 電子機器

世界の半導体メーカーが技術力を高く評価する電子部品製造メーカー、イースタン。同社はお客様第一主義の経営方針のもと、お客様の要望にスピーディーに応えることに努めており、2009年末には製造リードタイム半減(当社標準モデルで3週→1.5週)の社長方針が提示されました。当時、計画は人手でMicrosoft Excelを使って行っていましたが、製品の3割程度しか計画を立案できず、製造リードタイム半減にはスケジューラの導入が不可欠でした。

1次ステップでNC工程、2次ステップで全工程に展開する2段階導入を行うことになり、複数の生産スケジューラを検討した結果、当時、NC工程の複雑な制約を満たすことができたのはFLEXSCHEだけでした。導入後、計画作業時間は延べ月840時間から月20時間に大幅短縮。各工程に作業指示モニターを設置し進捗状況などの情報共有も実現。現場の見える化により仕掛在庫の低減も図っています。現在、実績データなどの分析機能の強化や、FLEXSCHEによる計画と現場のずれをなくすべく業務改善を進めています。

2009年末、社長方針で示された製造リードタイム半減を目指す

諏訪湖から南東に10km弱、八ヶ岳の麓に世界の半導体メーカーから技術力を高く評価される電子部品製造メーカー、イースタンの本社と工場があります。同社はパッケージ基板事業と、電源装置などパワーシステム事業を展開しています。

同社の製造した半導体パッケージ用プリント配線板は、世界的に著名なスマートフォンやタブレットに採用されており、製品の薄型化・高機能化が進む現在、同社が強みとする高密度・高精度な半導体技術に対するニーズは一層高まっています。

1961年設立以来、同社の歴史は、はんだメッキスルーホール技術、チップオンボード技術、マルチチップモジュール技術、リジット基板の薄型化などその時代の先駆的技術への挑戦の歴史です。2013年2月には日本特殊陶業と資本・業務提携を行い、パッケージ基板事業の強化を図っています。

売上の海外比率が8割を占める現在、グローバル競争の中で勝ち抜くために、日本でのものづくりにこだわる同社では、お客様第一主義の経営方針のもと、お客様満足度の向上に努めています。半導体関連業界において、お客様からの要望にスピーディーに対応することは、お客様との信頼関係を築き、安定受注を継続するうえで必須条件となります。

「競争激化する半導体業界では開発スピードが競争力につながります。当社はお客様の開発を支援する一環として10年前から特急試作製造チーム、ブルーコマンドーを設置して試作品の超短納期を実現しています。また、2009年末、製造リードタイムを半減するという社長方針が提示されました。短納期のニーズが高まっている現在、非常に先見の明がある経営判断だったと思います」とパッケージ基板事業部 生産管理センター 生産管理部 部長 福本聖博氏は話します。

NC工程の制約を満たすことができたのはFLEXSCHEだけ

福本 聖博 氏

パッケージ基板事業部
生産管理センター
生産管理部 部長 福本 聖博 氏

2009年以前、同社の生産計画はすべて人がMicrosoft Excelを使って1工程ずつ立てていました。しかし、100ワークを1つのロットとして約2,000ロットが常時流れている中、すべてのロットに対する計画立案は困難であり、全体の3割程しか日程がつくれない状況でした。また立案した計画も工程の負荷を考慮したものではなく、単純に完了時間を示すだけとなっており、バッティングした場合にはその時間に作業が終了しないケースも多くありました。計画変更も、Microsoft Excelを塗りつぶして進捗管理を行っていたため、変更対応に膨大な手間と時間を要しました。

「当時、製造リードタイムを半減するという目標は、約3週を半分の1.5週にすることでした。人手による対応では不可能な目標でした」と福本氏は振り返ります。

製造リードタイム短縮では仕掛在庫の低減も課題となりました。「前工程のトラブルでロットが入ってこないときも想定して、当時、6週を超える納期のものも含めて非常に多くの工程で仕掛在庫を溜めていました。マンパワーの有効活用や納期優先の観点から仕掛も必要ですが、適切な仕掛を見極めるための情報がなく、機械の空き具合など工程の状況把握も困難でした」とパッケージ基板事業部 生産管理センター 生産管理部 生産管理課 課長 伊藤浩二氏は話します。

こうした課題を解決するために、工程の負荷を考慮しながら自動立案する生産スケジューラを検討することになりました。検討を中心になって進めたのはシステム管理部と、同社のシステム開発や運用を支援するキッセイコムテックです。長野、東京を拠点に事業を展開するシステムインテグレーターのキッセイコムテックは、同社に対して生産管理システムを導入するなど10年以上、厚い信頼関係のもとでさまざまな技術支援を行っています。

今回の導入は、1次ステップはNC工程を対象とし、2次ステップで全工程に拡大していく2段階で行うことになりました。NC工程は作業コストも高く、材料も高額のため、最初にNC工程を充実させたいという狙いもありました。

スケジューラ採用の経緯について、管理統括部 システム管理部 参事樋口道彦氏は「キッセイコムテックさんと一緒にFLEXSCHEのセミナーに参加しました。以前、他社の簡易スケジューラを導入した経験がありましたが、それに比べると操作性、機能性がかなり高いという印象を受けました。1次ステップとなるNC工程はプリント配線板のパターンを導通させるための穴あけ作業を行います。製品によって加工時間も大きく異なり、12時間で40万の穴あけ作業を行う製品もあれば、20分で加工が終了する製品もあります。NC工程の複雑な制約を満たすことができたのはFLEXSCHEだけでした」と話します。

各工程に作業指示モニターを設置し進捗状況を共有

伊藤 浩二 氏

パッケージ基板事業部
生産管理センター
生産管理部 課長 伊藤 浩二 氏

2010年4月からスケジューラの検討を開始し、2010年8月にFLEXSCHEの採用を決定。2011年10月の本稼働まで準備に時間をかけました。

「50年の歴史がありますから、現場に説明し理解を得るには時間も必要でした。会社の方針を説明するとともに、『これまでは生産管理部の担当者の経験に基づいて計画を立案してきましたが、これからはスケジューラというシステムによって、納期に間に合わせるためにはどうすべきか、自動的に計算した計画がベースとなります』と、理論的な説明を行い、納得していただくように努めました」(伊藤氏)。

スケジューラを導入するためにはシステム面での課題もありました。「マスターの整備もできていませんでしたから、現場の協力を得ながら業務をデータに落とし込む作業を行いました。また、現場にスケジューラの必要性を説明した際、現場はFLEXSCHEを導入すればすべてオーケーだと捉えますが、システム導入の過渡期だからと言って日々の生産量をおとすわけにはいきません。その点の理解を得るのが大変でした」と管理統括部 システム管理部 主任 牛山寛和氏は話します。スタート当初、運用面での課題について「NC工程の前工程で遅れが出てしまい、FLEXSCHEで立てた計画通りに製品が入ってこないことがありました。そのときにどう対応するのか。運用ルールの調整を行い、現場がとまどうことなく計画が進められるように工夫をしました」と伊藤氏は話します。

計画の立案は、生産管理システムからのマスター情報やロット情報などに加え、作業実績収集システムからの実績データをFLEXSCHEに取り込んで行っています。また従来、作業指示は1日1回、紙により行われていましたが、現在は各工程に作業指示モニターを設置しFLEXSCHEで立案した計画作業とその進捗状況を表示。情報は2分半ごとに更新され、作業の遅れを赤く表示するなど進捗状況の情報共有を図っています。NC工程では大きなモニターが天井から吊るされており、前工程の遅れなども一目瞭然です。

「キッセイコムテックさんには開発、構築のサポートはもとよりスタート当初のルールの調整など困ったときに本当に助けてもらいました。生産管理システムや作業実績収集システムもキッセイコムテックさんに導入していただきましたから、FLEXSCHEとの連携面もスムーズに行えました」(牛山氏)。

FLEXSCHEの解と現場の作業とのずれをなくすことが次のテーマ

樋口 道彦 氏

管理統括部
システム管理部 参事 樋口 道彦 氏

現在、順調に稼働を続け、2次ステップの全工程への展開も完了。導入効果も着実に表れています。仕掛在庫の低減では、1ロットあたりの加工時間や、全工程で仕掛っているものが今日すべて終わるのかといったことも目で見てわかるなど、現場の状況が把握可能となり必要のない仕掛の抑制に結びついています。

計画作業時間の短縮では飛躍的な効果を実現しています。「従来、生産計画の立案に3人で担当し、月の業務時間の大半を占めていました。相当な時間を費やして立案しても、遅れや変更は生じますし、その再スケジュール作業のボリュームも膨大なものでした。いまは、再スケジュールの作業も含めて、1人が担当し1日1時間で月20時間です。計画をつくることから、計画の精度をあげることに作業の中心が移りました。」(伊藤氏)。

製造リードタイム短縮の取り組みも前進しました。「当社の製品ができあがるまでに平均70工程あります。1.5週で完了するためには1日3工程を動かさなければなりません。FLEXSCHEで全工程、すべてのロットに対して計画を立案できるようになり、計画通りに実行することで製造リードタイム短縮の実現が可能です。また遅れや変更にも迅速に再スケジューリングが行えることに加え、更新情報を各工程のモニターに表示することで現場との間で情報共有が図れたメリットも大きいですね」(福本氏)。

しかし、FLEXSCHEで立てた計画通りではなく、現場の作業で遅れが生じているのが現状です。「ものがなかった」、「段取りを考慮した」など遅れの要因を吸い上げ、FLEXSCHEの解と現場の作業とのずれをなくす業務改善が3次ステップのテーマとなります。そのために実績データを含むさまざまなデータの分析機能の強化も行う予定です。

また、2次ステップの段階でシミュレーション機能を追加し、投入されているロット以外のシミュレーションもFLEXSCHEで行えるようになっています。

牛山 寛和 氏

管理統括部
システム管理部 主任 牛山 寛和 氏

「人員配置の最適化や設備投資の最適化などにシミュレーションを役立てていきたいと考えています。経営判断を支援する情報の提供も生産管理部の重要な役目です。経営に貢献するためにFLEXSCHEの機能を最大限に活かしていきたい。長年、生産管理で培った私のノウハウをすべて盛り込んでみたいですね。今後、外部パッケージを利用するという意識ではなく、FLEXSCHEによる計画の精度を高めるために何をどのように入力すればいいか、FLEXSCHEを中心とする当社のシステムとして進化させていきたいと思います」と福本氏は話します。

半導体業界のグローバルな市場において高い技術力と徹底した生産管理でさらなる飛躍を図るイースタン。同社の成長を支えるFLEXSCHEへの期待は日々高まっています。

パートナーの声

弊社では、以前に他社の簡易なスケジューラソフトを導入させて頂いた経験がありましたが、今回のイースタン様で活用するには機能的に不足がありました。そこで、お客様と共に市場のスケジューラソフトを調査し、最終的にFLEXSCHEを選定致しました。FLEXSCHEの良かった点として、1つは操作性があります。マウス操作を主軸に計画された作業の移動や確認といった作業が非常にし易いと感じました。また、計算式を用いた柔軟なスケジューリングルールを定義できる点において、工程数が多く製品のライフサイクルが短いお客様の将来的なご要望に対しても、充分応えられる製品だと確信しました。
初めての導入であった為、正直苦労した点も多かったのですが、イースタン様プロジェクト関係者の皆様の努力と、フレクシェ社の迅速なサポートもあり、無事稼働できた時は感無量でした。
現在、FLEXSCHEを中心としたタブレット端末やハンディターミナルによる作業実績収集システム、現場での作業指示モニターの見える化など、一連の工程管理システムの構築は行いましたが、未だ課題は残っています。今後も、お客様と協力しながら、お客様の業務に貢献できるより良いシステム構築を目指し、精一杯取り組んでいきたいと思います。

導入企業概要

株式会社イースタン様

設立 1961年2月
本社 長野県茅野市塚原1-8-37
資本金 4,636百万円
従業員数 695名(単体)、1095名(連結)※2013年3月末現在
事業内容 半導体パッケージ基板の製造・販売/電源装置等の電子機器の製造・販売

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