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今後のPGPに向けて

フレクシェカップの設計思想に見る、競技ビリヤード・メジャー化の方法

2013年12月14日、フレクシェカップ初日の夜、会場で運営に奔走していたJBプロモーションズ代表、加藤直哉氏の携帯が鳴った。親交あるビリヤードプロからの電話だった。「今、うちのビリヤード場にお客さんが一組来たんですけど、『さっきまでフレクシェカップを見てて、ビリヤードがしたくなって来た』って言うんですよ」。それは加藤氏が、自分が手掛けたものの影響力の大きさを実感した瞬間だった。

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開催前、筆者はこう書いた。「今大会の成功とは何か。筆者は次の大会、すなわちシリーズ第2弾だと考える」。まず先にはっきりと述べなければならない。閉幕から1ヶ月経った今も第2弾は決まってはいない。だから、成功と断言するには時期尚早であろう。

では、失敗だったかというと、決してそんなことはない。フレクシェカップは、主催のJBプロモーションズの掲げていた理念――『最高の環境で最上の競技ビリヤードを見せる』――が、きっちり具現化されていたイベントだったと明言できる。『クイーンズスクエア横浜』を訪れた多くの一般買い物客と通行人。つまり、「世間」の一部は、あの日確かに競技ビリヤードを見たのだ。

主催者発表では、その数は約1万人(※約5分以上足を止めていた人の推計人数。14日と15日の2日間)。世間への露出が少ない競技ビリヤードが、パブリックな空間でそれだけの一般客を集めたことは上出来と言えないか。しかも、外部イベンターやプロモーターを雇わず、JBプロモーションズとJPBA(日本プロポケットビリヤード連盟・主管)が手作りしたイベントであるにもかかわらず、である。

加藤氏は言う。

「予想以上の観客動員でした。そして、興味津々で観て行く方が多かった。施設側の人に言われたんですが、コンサートなどの賑やかなイベントではなく、ああいう息を殺して見るタイプのイベントで人垣ができることは滅多にないそうです。私自身、あの人垣を見た時と、夜の電話を受けた時に、『ビリヤードってすごいんだな』とコンテンツとしての魅力を改めて感じました」

他の関係者や出場プロにも感想を求めたところ、「予想よりお客さんは多かった」と答えた人が過半数。一方で、「予想通り」という声も複数あった。その内の一人が冠スポンサー・株式会社フレクシェ代表の浦野幹夫氏だ。

「反応はすこぶる良かったと思いますが、人数という意味では予想通りでしたね。むしろまだまだ増やせるなと。会場のレイアウト的に今回はあれ以上は難しかったと思いますが」

ナインボール世界チャンピオンの赤狩山幸男は、自身の豊富な海外遠征の経験を絡めてこう語った。

「海外で同じようなショッピングモールで何回か試合をしたことがありますが、その雰囲気とこのフレクシェカップは良く似ていました。お客さんの数は予想通りです。ただ、ボールが止まった時は人が減りましたね。そこが課題でしょうか」

予選を通過して権利を勝ち取った西尾祐も「人数は予想通り」と言う一人だが、答え方が彼らしい。

「このぐらいは来るかなと。いや、どんなものでも、誰かが本気で本物を見せたら、人は見ると思いませんか? その『誰か』の中に自分が加われたことが誇らしいです」

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フレクシェカップを第1弾イベントと位置付けている『プロフェッショナル・ゲームズ・オブ・プール』シリーズ(以下、PGP)。継続への期待を込めて、「なぜ人垣は消えなかったのか」を改めて検証したいと思う。

1. 会場はアクセス至便な好立地

クイーンズスクエア横浜は、みなとみらいエリアを代表する商業施設の一つ。2つの鉄道路線の駅から近く、人通りがかなり多い。また、舞台となるイベントスペース(クイーンズサークル)は巨大な吹き抜けに面しており、実に絵になる空間だった。出場選手や観客の声を総合すると「"メジャー感"のある場所」だった。

2. 単純にビリヤードが珍しかった

ビリヤードがどんなものかは知っていても、試合を見たことのある人は少なかったはず。それが、立ち寄りやすいパブリックスペースで無料で見られるとなれば、「じゃあ、ちょっと」となる人がいておかしくはない。そうやって人垣ができ、それがさらに人を呼んだ。一方、プロ側はほぼ全員が、「不特定多数の人に見られて撞く気持ち良さ」について言及していた。

3. 試合テーブルは2台のみ。ラシャの色は意図的に不揃いに

2日間・全15カードを2台だけで見せた。これは「全てがメインカード」という特別感が演出されていただけでなく、単純に試合そのものやお目当ての選手が見やすく好評だった。また、2台のラシャ(テーブルクロス)の色を揃えず、わざと緑と青に分けて、「青テーブルでは○○対××です」などと全て色でアナウンス。これは筆者も眼から鱗の良策だった。

4. トッププロ16名が出場。男女対決あり

JPBAのトップランカーと、主催者推薦/スポンサー推薦を加えた計12名が前もって出場確定。そこに予選で選抜された4人を加えた16名のみが参戦を許された。このプレミア感ある出場メンバーと、単一フォーマットでの男女対決は、ファンのみならず一般の人々の関心も引いた。その男女対決の結果を記すと、梶谷景美は初戦で有田秀彰に敗れたが、河原千尋は西尾祐を倒し、続く大井直幸戦でもギリギリまで相手を追い詰めて会場を沸かせていた。

5. ハイレベルな競技ビリヤード

いざ試合が始まってみると、一般の人々からは、「すごい。プロってボールを外さないんだ」「これが本当のビリヤードなんだね」という驚きに満ちた好意的な反応が多かった。MCを務めた堀潤氏(元NHKアナウンサー・現ジャーナリスト)も同様で、「ある程度わかった状態で見たら、こんなに面白いスポーツだったとは」という感想を漏らしていた。また、初戦から好カードが続出し、どの試合もスリリングだったため目の肥えたファンが見ても楽しめたはずだ。

6. 幕間のトークショーとイベント

試合の合間には、「喋れる女子プロ」野内麻聖美と堀氏がMCとしてステージに上がり、出場プロ達とトークで絡みながら競技ビリヤードの魅力を掘り下げて伝えていた。他にも、ターゲットプールなどの実演イベントや、AAR Japan(難民を助ける会)のトークショーなどがあり、多くの人々を飽きさせずに繋ぎ止めていた。また、これらのイベントに出演した出場プロ達も爽やかにリクエストに応じており、その献身的な姿勢が印象に残った。

7. 声掛けとパンフレット配布

大会スタッフは足を止めたばかりの人を目ざとく発見し、「ビリヤードのプロの試合をやっているんですよ」と声を掛け、パンフレットを手渡していた。これは4色刷り4ページで、大会プログラム、ルール解説、選手紹介などがコンパクトにまとめられており、しっかりと目を通していた人が多かった。余談だが、今大会で優勝した羅立文は、試合の合間に自ら約50部を配ったという。

8. 大型モニターでの解説

通りすがりの人でも見られるようにと、通路側に設けられた大型モニターでは試合を常時放映していたが、いつからかJBプロモーションズの谷崎文保氏が、キューを指示棒代わりに振るいながら肉声で生解説。これは氏のアドリブだったが、ビリヤード経験のない人を対象にしたベーシックな内容と歯切れ良い名調子に続々と人が集まっていた。

9. 顔出し看板の設置

イラストのプロが描いた「ビリヤードをする犬」の顔出し看板を置いたところ、グループ客や家族連れに大人気の記念撮影スポットになっていた。これはお客さんを会場に滞留させることに一役買っていたが、Facebookなどで「ビリヤード」という言葉と共に写真を拡散する人が多いことも見越しての導入だった。

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以上が、動員に繋がったと思われる要素で、特に1、3、4、8、9はビリヤードイベントでは「初めて」かそれに近いアイディアだ。「9」は付帯的なものだが、それ以外の8つを見てわかることは、「最高レベルの競技ビリヤードはそれ自体が魅力的なコンテンツたりえること。そして、その魅力をその場でダイレクトにわかりやすく伝える工夫をすれば、人は見てくれる可能性が高いこと」となる。加藤氏は語る。

「フレクシェカップは何よりもまず一般の人々に向けて競技ビリヤードをアピールするためにデザインした大会。そのためのアイディアの数々が奏功していたと思います。JPBAのランキング対象試合にはせず、より自由度の高いイベントという形態を取ったのも良かったです。ただ、様々な課題も浮き彫りになったので、それは今後解消していきたいですね」

課題の一つを挙げると、パンフレットをもらってもなお、知らない人には競技ビリヤードのルールがわかりづらかったということだろう。セーフティしかりプッシュアウトしかり、眼前のテーブルで行われていることの意味がわからず、立ち去ってしまった人もいた。だからこそ、上記の「8」は受けに受けたのだ。競技ビリヤードの見せ方の理想型がここにはっきりと示されている。

そんな反省点はあれども、新機軸のほとんどが成功を収めていた点に注目したい。フレクシェカップは旧態依然としたやり方に範を取らず、初めから一般の人々寄りに舵を取ったことで動員に成功した。すなわち、ビリヤード業界内だけで完結していた従来型の「密室的」トーナメントスタイルへの、強烈なアンチテーゼでもある。そしてこれは、多くのプロ競技スポーツがメジャー化して行く過程で通って来た道ではないだろうか。しかし、単発イベントでは効果は少ない。継続していかなければ時代は変えられない。

フレクシェカップに続くプロフェッショナル・ゲームズ・オブ・プール(PGP)の第2弾が、いつどのような形で実現するのかはわからない。ただ、既にJBプロモーションズは新しい動きを始めており、周囲は少しずつ騒がしくなってきている。実際に「先に繋がりそうな話」のいくつかを筆者も耳にしている。

フレクシェカップの出場プロであり、JBプロモーションズ副代表でもある有田秀彰は大会後に自身のブログでこう綴った(※一部編集済)

「(略)大切なのはこれからです。元々、フレクシェカップを開催することは『目的』ではなく、競技ビリヤードを世の中に知ってもらうための『手段』の一つとしてフレクシェ様が与えてくれた起爆剤に過ぎません。小さな『火』が点火されたばかりです。この「火」を絶やすことなくより大きな「炎」にすべく、ビリヤード業界の皆さんの協力をお願いしたいと思います」。

競技ビリヤードをメジャーに――その小さな火は確実に点された。その火種を大きく燃焼させるための触媒となるものは、ビリヤード業界人の「当事者意識」をおいて他にない。第2弾を生み出すのは「誰か」ではなく我々だ。

文・小林亨 (Billiards Days主宰)

2014.1.21 掲載

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