素材・原料系の企業でも欠かせないスケジューラ
多段階で詳細な日程計画を実現
株式会社イーテック様 化学
- 2005年9月 作成
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JSR株式会社のグループ会社として、粘着材や接着剤などのエマルジョン事業と、ファイン事業を2本柱とする株式会社イーテック。いわゆる「素材・原料系」の企業ですが、8年前にすでにスケジューラを導入し、1年半前にシステムを再構築するに当たってFLEXSCHE導入を図りました。
工程数の多い「組立て製造系」と比べ、「素材・原料系」の企業は工程数も少ないといわれますが、なぜいち早くスケジューラを導入し、その中でなぜFLEXSCHEを選ぶことになったのでしょうか。藤枝久氏と、佐藤勝彦氏にお伺いしました。
手書きのスケジューリングで膨大な時間
30社以上ものグループ会社を抱えるJSR株式会社。そのグループ会社の中でエマルジョン事業を担っているのが株式会社イーテックです。創業は1963年。製造しているのは粘着材、接着剤、コート材、セメント混和材などの石油化学系の素材で、建築・土木用の材料、カーペットの裏張り、タイルや床用の接着剤などに利用されています。創業以来、エマルジョン事業を手がけていましたが、最近ではファイン事業にも進出し、事業拡大を図っています。
事業所は四日市、東京、大阪、名古屋の4か所ですが、今回FLEXSCHEが導入されたのは、三重県四日市市にある「本社・四日市工場」。イーテック全体の従業員181名のうち、148名が勤務する、同社の中心を成している事業所です。
「当社は早くから生産管理業務のシステム化に積極的に取り組んでおり、8年前にパソコンによる生産管理システムを構築する際に、その取り組みの一環として、スケジューラの導入を検討することになりました。それまでの計画立案は実に原始的で、現場リーダーが紙の予定表にスケジュールを記入し、それをコピーして原料の発注をするといった具合でした。工程はさほど多くはなかったにもかかわらず、計画立案に膨大な時間を費やしていたのです」その理由は、工程以外に複雑な条件を数多く抱えていたからでした。
8年前からスケジューラを導入
経営管理部次長兼経営管理部
管理グループリーダー
藤枝 久 氏
エマルジョン事業、ファイン事業とも、「製造」と「充填」の2つの工程からなります。「充填」工程とは、「製造」工程でできた製品を缶やドラムなどの容器に詰める作業工程のことです。
「工程の種類は2つですが、その中に制約条件を複雑にするさまざまな要因があります。1つは会社規模の割に事業が多く、製品の種類だけでも『繊維加工材料製品』『化学品製品』『防水材製品』など大きく6種類あり、工場も同じ敷地内に6工場もあることです。1工場1製品ならわかりやすいのですが、1工場で複数の製品を製造することがあります。2つめが、タンク数の多さです。タンク数は50もあり、タンクはそれぞれ生産能力や容量が違うため、つくる製品によって使用するタンクに制限がある等、さまざまな制約条件を考えながらスケジュールを組まなければならないのです。」こうした制約条件のほかに、さらにスケジューリングを複雑にしていたのが納期でした。
「素材・原料系というと納期に余裕があるというイメージがあるかもしれませんが、当社の場合は短納期なのです。たとえば、建築土木系の素材は製造即納入のケースがあったり、時には、『工事で使うのですぐに納品を』というオーダーもあります。さらに、ジャスト・イン・タイムに近い生産計画を立てているユーザーも多く、そうしたニーズに応えるために、平均納期は3、4日、短いものだとオーダーの翌日ということもあるのです。そのため、計画立案をしても、その後何度も計画を立案し直さなければならず、手作業によるスケジューリングではとても対応できませんでした。」
こうしたことから8年前に、スケジューリング用のパッケージソフト(スケジューラ)の導入をしました。自動スケジューリングが可能になったことで計画立案の時間は大幅に短縮されました。
「ただ、機能面で満足していたかと言うと、実際にはそこまで至っていませんでした。当初、多段階でスケジュールを組む予定だったのですが、多段階にするとマスターの設定が非常に複雑になるため、結局1段階でスケジューリングすることにしました。しかし1段階だと10バッチしか入らないところに15〜18バッチも割り付いてしまうといったこともあり、実際に使えるスケジュールにするために頻繁に人手で修正を加える必要がありました。この作業に時間をとられていたため、手作業による修正をできるだけ少なくしたいというのが、長年の課題だったのです。」そして2年ほど前、基幹システムの再構築を図ることになり、この一環でスケジューラも見直し対象となったわけです。
「できそうもないことを実現できる」スケジューラを
経営管理部管理グループ主事
佐藤 勝彦 氏
本格的な生産管理システムを構築するに当たって、保守・メンテナンスを担当する会社にソフトの選定を任せ、インテグレーターとしてシステム構築をお願いすることにしたのです。
「『任せる』といっても、当社なりの要望は出しました。まず第一は、当然のことですが、それまでのスケジューラより機能が優れていることです。2つ目が費用で、予算内に収まるのであれば、ゼロからスケジューラをつくってもらっても良いと思っていました。そして3つめが、課題だった多段階によるスケジューリングができ、手作業による修正を少なくできることです。」インテグレーターが出してきた答え、それがFLEXSCHEでした。多段階のスケジューリングが可能なことなど必須条件をクリアしていることもありましたが、もう1つ大きな決め手となったのが柔軟性とカスタマイズのしやすさでした。
「なぜFLEXSCHEなのか聞いてみたところ、『柔軟性に優れカスタマイズがやりやすい』という話でした。先ほどお伝えしたように、当社は素材・原料系の会社でありながら、タンクの数が多かったり、同じ工場で違う製品をつくったりと複雑な条件が多い。そうしたものを機能としてしっかりと取り込むためには、通常のパッケージソフトでは限界がある。スケジューラを導入しても、当社の要望に対して『できない』では導入する意味がありません。『できそうもないことも実現してくれる』スケジューラであることが必要だったわけで、FLEXSCHEの柔軟性とカスタマイズのしやすさがソフト選定の決め手となったようです。」
佐藤氏が実質的なリーダーとなり、各部署からシステム委員を選出し、生産管理システムの検討がスタートしました。佐藤氏は現場に即したスケジューラにするために、現場責任者の声を吸い上げていきました。その中で、どうしても取り入れたかったのが容器(荷姿)による充填時間の違いを機能として反映させることでした。
「容器には大きく分けて、『缶』『ドラム』『ローリー』の3種類あり、缶は容量が小さいので充填効率が悪く、一定数量当たりの充填時間も長くなります。一方、ローリーは大容量の容器なので効率良く充填できるといったように、一定の数量を充填する場合、容器の種類によって充填時間も変わるのです。それをスケジューラ上で表現できないかと考えました。」これはマスターの持ち方を工夫することによって、FLEXSCHEの標準機能で対応できました。
そして、もう1つFLEXSCHEで実現を図ろうとしたのが、オーダー量に応じてタンクを選べるようにする機能でした。「タンクの中には製品などを攪拌するための羽根がありますが、その羽根の位置によって生産できる量(生産能力)が決まってしまうのです。たとえば、羽根が上に位置する10トンタンクでは、2トンの量は対応できません。羽根が上にありすぎて攪拌できないからです。オーダーは3トンだったり10トンだったりと違いますから、そのオーダーに適したタンクを選ぶ必要があるのです。さらにタンクによってはその羽根が上下に2つ付いているものもあり、それに対応するために2つの生産能力を設定可能とすることも求められました。」
インテグレーターにこの要望を伝えたところ、インテグレーターはフレクシェ社の協力を得て、その柔軟性を最大限利用して、無事取り入れることができました。「他にも、どうしても解決が難しい問題が生じたことがあったのですが、フレクシェ社から社長自ら2度も当社に足を運んでいただき、細かく丁寧に対応してくれたのであっという間に解決できました。あの迅速さには驚きました。」
そして、最大の懸案だった多段階のスケジューリングも「製造」と「充填」の2段階に分け、一部複雑なものは4段階にすることで標準機能でクリアできました。
細かいレベルまで表現できる柔軟性の高さに、今後の期待高まる
FLEXSCHEが稼動したのは2005年2月ですが、これを境にイーテックのスケジューリングは大きく変わりました。「まずもっとも大きく変化したのは、非常に細かいレベルまでガントチャート上に表現できるようになったことです。以前は表現できるレベルは限られていましたが、FLEXSCHEになってから、タンクに入れるべき原料の量、製造や充填など工程ごとの所用時間が表現できるようになりました。それも分単位の設定が可能になったため、大雑把な計画立案から、正確で無駄のないスケジューリングが可能になりました。」また、使ってみて「想像以上に便利だった」と語るものがあります。チャート上の色分けです。
「当社は受注生産品以外に、生産計画の中で標準在庫を持つ見込生産品もあるため、ガントチャート上で一目でわかるように、『受注生産品』と『見込生産品』の色を別々にしてもらいました。この結果、優先度の高い製品の生産計画が一目瞭然となり、スケジューリングする際に調整が少なくなり、とても助かっています」そして最大の課題だった、人が手作業で修正する時間は「1~2割減った」と語ります。
「この部分はまだまだ進化の余地があると思っています。担当者が手作業で計画を修正する業務のやり方に慣れてしまっていることや、新しい生産管理システムに不慣れなところもあって、必ずしも効率的に運用できていないのが現状です。まだ導入して日が浅いので、この部分はインテグレーターやフレクシェ社の協力を得てシステム機能の充実を図るとともに、当社で運用の改善を図っていくことでより良いものにしていきたいと思っています。」
8年前からスケジューラを導入するなど、最新のシステムをいち早く取り入れて、今後も改革に意欲的なイーテック。その分フレクシェ社への要望と期待も大きいようです。
「うまくスケジューリングできなかった時に、その理由を画面に表示してくれると次に何をするべきかわかるので、ぜひこれは追加機能として取り入れていただけたらと思っています。期待するのはやはりFLEXSCHEの可能性です。これからさらに業務改革を進めていく中で、当然当社からさまざまな要求、要望が出てくると思います。そのときに、通常のスケジューラでは対応できない可能性があります。しかし、FLEXSCHEには他社のスケジューラにはない高い柔軟性があります。その意味で、今後出てくるであろう我々の無理な要望も、きっと叶えてくれると期待しています。」
インテグレーターの声
イーテックさんからスケジューラの選定を全面的に任された際には、社内で長い時間をかけて検討を重ねました。イーテックさんは早くから先進的な生産管理システムに取り組んでおり、要求レベルも非常に高く、それに応えられるスケジューラを探しました。その過程で出会ったのがFLEXSCHEでした。イーテックさんの要望を叶えることはもちろんですが、当社として高く評価したのは、カスタマイズがしやすく、自社で保守・メンテナンスが容易だという点でした。
イーテックさんの製造工程は、工程数こそ多くはありませんが、複雑な制約条件があったため、それをいかに実現したらよいかに腐心し、細かな修正を何度も加えて、完成度を高めていきました。その過程で大きな課題に直面した際にはフレクシェ社に応援を頼みましたが、迅速に対応してくれたので助かりました。
今回の開発で当初予定していた機能はほぼ実現できましたが、イーテックさんのFLEXSCHEを中心とする生産計画周りの仕組みにはまだ改善の余地が残されていると思っております。今後イーテックさんと協力して更により良い仕組みにし、イーテックさんの業務の効率化に貢献していきたいと思っております。
導入企業概要
株式会社イーテック様
本社 | 三重県四日市市大治田1-6-16 |
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URL | http://www.etec.jsr.co.jp/ |
設立 | 昭和38年 |
事業内容 | 合成ゴムラテックス、アクリルエマルジョンを主原料とする建築・土木用材料、産業資材用材料の製造・販売、およびアクリルエマルジョン、ファイン系製品等の製造・販売 |
売上高 | 97億円(平成17年3月期) |
従業員数 | 181名(平成17年6月現在) |
特徴 | JSR株式会社100%出資。平成16年よりファイン事業も開始し、エマルジョン事業との2本柱となる。 |