「スループット増大」という製造業の最重要課題に取り組むべく、
全社一丸となって自力でFLEXSCHEを導入して着実に成果を挙げる
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板金加工業
「スループットの増大」
それは全ての製造業にとって常に重要な課題でありながら、その解決は容易ではありません。その解決手段としてFLEXSCHEを選んだのが、板金加工全般を取り扱い、国外にも直接輸出を行う『株式会社ナカハラ』。設計から納入まで一貫内作生産を可能にしたナカハラは効率的な工場運営・生産管理によって外注費を抑制し、なおかつ生産性を高めることを目指して、FLEXSCHE導入を決めました。
FLEXSCHE導入にあたってもシステムインテグレーターの手を借りずに全社一丸となって取り組み、みごとにその成果を上げています。その導入までにぶつかり、超えていった壁と効果の実感について、同社のFLEXSCHE導入に携わったチームメンバーの皆様にお話をお伺いしました。
グローバルに活躍する大手板金メーカー
1940年創業という長い歴史を誇る『株式会社ナカハラ』。兵庫県加西市にある本社工場とそこからほど近い小野工場(小野市)にて板金加工全般を取り扱うメーカーです。社員数は280名(2018年3月時点)と板金加工のメーカーとしてはかなりの大規模工場です。主要顧客としては創業初期から取引が続く『キャタピラージャパン合同会社』や『平和金属工業株式会社』、『オークラ輸送機株式会社』などがあり、建機カバーなどの製造を行っています。
また2200トンの巨大なプレス機2台を始め、カチオン電着塗装などの他の板金メーカーとは一線を画す充実した設備を備えて、幅広い製品の生産を行っていることが特徴的です。設備面で特に評価が高いものの1つが窒素で切断ができる加工機械。塗装の剥がれの原因となる酸化皮膜を付けずに金属を切断することができます。年々求められる製品品質の基準が高くなる中、それを十分に満たして顧客の信頼を獲得するものづくりを実現しているのです。
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2200トンプレス機
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カチオン電着塗装
また、ナカハラが顧客から支持を集める理由の1つが、加工や溶接、組み立てに塗装、そして納入までを行う一貫内作生産体制です。さらに設計にも力を入れており、「お客様からいただいた3Dモデルをもとに図面を起こし、設計するということも行っています」と同社工場マネージャーの田中氏は紹介します。
ナカハラがこれほどまでに成長していく起点となったのは2000年のTOC導入と、2008年の加西本社工場の設立です。特に本社工場の設立以降は設備を強化することで受注の幅も広がり、顧客数も増加。そして従業員の数もどんどんと増えていきました。現在では国内にとどまらず、アメリカやメキシコ、ブラジル、インドネシアなど世界へと直接輸出を行うグローバル企業としても活躍を続けています。
スループット向上を目指した総合的なIT戦略
そんなナカハラがFLEXSCHEの導入を決めたのは2010年のことです。社内では2000年に導入したTOCの考え方を用いて、右肩上がりの成長を続ける最中にありました。さらなるスループット増大を目指した総合的なIT戦略に基づき、生産管理の強化を決めます。
『株式会社ほんま』代表取締役:本間 峰一 氏
生産スケジューラの選定に関与した同社顧問コンサルタントの本間峰一氏(『株式会社ほんま』代表取締役)は「一度、フレクシェさんにご相談した際に拝見したサンプルデータやいただいた説明が、ナカハラさんのTOCの考え方にぴったり合致していたんですよね。フレクシェさんが直接、いろいろな相談に乗ってくださったのも、その後の導入に向けて明るい材料でした」と話します。
当時の生産計画の立案はMicrosoft Excel®を用いたものでした。短期間のうちにどんどんと工場が大規模化するナカハラでは、計画立案の範囲も日ごとに広くなっていきます。その当時から現在に至るまで計画立案を担当する同社生産管理チームマネージャーの河合氏も大変な苦労を感じていたそうです。「システムを用いない計画立案にはやはり限界を感じていました。実際のところそれほど厳密に計画を立てることはできていませんでした」と計画立案に改善の余地が多分にあったことを明かしました。
工程の一部に負荷が高まるにつれて、どうしても外注に出さざるを得ない工程も発生してきます。一貫内作生産が可能なナカハラにとって外注費用はスループット増大の阻害要因であり、生産の効率化によってさらなる内製化を進め、TOCを実践することがFLEXSCHE導入の最大の目的です。
まず着手したのは生産管理システムの刷新でした。それ以前に導入していたシステムがうまく稼働せず、用いるのは外注発注の時のみ、という状況に陥っていました。FLEXSCHEを最大限に活用するためにも基幹となるシステムの充実は重要課題だったのです。しかしながら、一部の特殊な業務工程などに対応するために膨大な時間を費やし、新たな生産管理システムが本稼働を果たしたのが2014年となってしまいました。決定から4年、ようやくFLEXSCHEの導入作業がスタートしていきます。
膨大な作業時間情報の収集に全社を挙げて取り組む
「導入に向けて動き出すにあたって、まずは『OpenDay』でフレクシェさんにご相談した際、FLEXSCHEの稼働までに巨大な壁があると感じたのを覚えています」。
そう語るのは同社執務補佐(システム担当)の浅見氏。ナカハラでは今回の導入にあたってシステムインテグレーターの手は借りず、完全にナカハラ社内で行いました。その実作業のほとんどを担当した人物です。課題となったのは『工程の作業時間情報の収集』でした。スケジューリングのためには当然、工程の作業時間情報は必要不可欠です。それまで、金額見積もりに用いるために作業時間の目安は設けていたのですが、実際の作業時間とは乖離があり、FLEXSCHEに与えるには不十分なデータだったのです。
切断用2Dレーザーやタレットパンチプレスなどのマシンを用いる作業時間情報の一部はCAD/CAMを通して得られたのですが、それ以外の工程では実際に作業時間を測定していくしかありません。これだけの規模の工場で全工程の作業時間情報を収集するとなると、もちろん多くの時間とコストを要します。そして測定には工場の作業者たちの協力も不可欠であり、負担をかけることになります。しかしながらナカハラの経営陣は『TOCの実現のためにはやるしかない』という意志を持ち、全社を挙げての導入作業の旗を振りました。
「もともとあった目安の時間を作業指示書に記載し、実際の作業時間との差を現場からフィードバックしてもらいました。場合によってはその目安の時間が実際の300%も長い、ということもあって驚かされましたね。作業者たちに協力を促すためにも、社長自ら朝礼で『必ずきちんとやるように』と指示をしていたおかげでどんどんとフィードバックも集まっていきました。FLEXSCHEの稼働は、全社員の協力なくして実現できなかったと思っています」。
こういったデータの収集はFLEXSCHE導入を進めただけではありません。正しい作業時間情報は作業管理指標の刷新や作業者の見直し、平準化という効用を生み、また更新された作業時間は見積もり金額にも反映されました。
大部分のデータを揃えるために要した期間は約1年。生産管理システムとも連携してテスト稼働に入ったのは2016年の9月でした。
「この段階になってようやく今まで明らかにできていなかった新たな情報が見えるようになり、『これはいける』という思いも強くしました」。
そして本稼働に至ったのは同年の11月のこと。作業時間のフィードバックを得て、マスターデータを更新する作業は現在でも続けており、データの精度を上げ、より正確なスケジューリングにつなげているそうです。
もちろん、導入作業はマスターデータの収集だけで済むものではありません。導入作業を担当した浅見氏は「FLEXSCHEへの理解そのものにも大変苦労しました。説明書を読めばわかるような簡単なものではないことは覚悟はしていましたが……。導入作業を進めていくための勉強として、メーリングリストを大変活用させていただきました。作業を始めたばかりの頃、私が見当違いな質問を投げかけても、フレクシェ社の担当者さんが本当に丁寧に返信してくださりとても助かりました。他のユーザーさんがした質問のやりとりなども公開されているので、これも私のFLEXSCHE関連業務に役立たせています」と話し、フレクシェ社のサポートを評価しています。
課題を克服し、さらにFLEXSCHE導入工程を拡大へ
稼働してからナカハラで意外と活用されているのがFLEXSCHEの負荷チャート。スケジューリング結果をもとに、該当期間の中で各工程の負荷率を視覚的に表現する機能です。この負荷情報を現場の各チームマネージャーと共有し、生産管理に役立てているそうです。生産計画立案担当の河合氏は「FLEXSCHE上で未来の各工程の負荷状況が可視化されるようになりました。負荷が高くなっている時には前倒しでの生産や外注発注などの判断が素早くできるようになり、リードタイムの調整もしやすくなりました」とその効果を実感しています。
ナカハラの中で特にボトルネックとなりやすいのが切断加工と曲げ加工という生産における初期の工程でした。当然そこが滞留すると、全ての工程に影響が出てしまいます。FLEXSCHEの稼働と時期を同じくして増産がかかっているナカハラでは目標とするレベルでの内製化にはまだ到達していませんが、切断・曲げ加工の負荷を下げるための判断が迅速にできるようになったおかげで、スループットの向上にも寄与しつつあります。
取材時点(2018年3月)でのスケジューリング対象は溶接工程と切断・曲げ加工を含むマシン工程のみ。今後はさらにサブアッシー工程や塗装工程などにも対象を広げるべく、検討を重ね、準備を進めています。
「サブアッシー工程はお客様との調整が難しく、塗装工程もモデリングが複雑なので、一筋縄ではいかないでしょう。ですが弊社としてはTOCの実践のためには避けては通れない今後の重要課題と考えています」(浅見氏)
ナカハラが会社として掲げる目標は、『TOCの実践と顧客第一主義、そして社会貢献を基軸とする経営方針のもとに全社員が一致団結すること』、そして『労働生産性を現在の2倍以上にすること』だそうです。
浅見氏は取材の最後に「これらの目標の実現のためには今後もFLEXSCHEが必要不可欠だと感じています」と付け加えました。
導入企業概要
株式会社ナカハラ
所在地 | 兵庫県加西市網引町字丸山2001-56 |
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設立 | 1940年 |
資本金 | 9,500万円 |
従業員数 | 280名(うち間接工36) |
工場・研究所 | 加西本社工場、小野工場 |
事業概要 | 板金加工全般 主に鋼板(板厚0.8~6ミリまで)ただし薄板が専門 |
URL | http://www.nakaharagp.co.jp/ |