ベテランインタビュー
取材日:2018年3月
株式会社エム・エス・アイイノベーション事業本部 取締役本部長 渡辺一夫氏
イノベーション事業本部 システムグループ部長 大場和成氏
2003年にFLEXSCHEパートナーとなってから東北全域を中心にFLEXSCHEを次々と導入しているMSI。しかし、それ以前は製造業の顧客をほとんど持っていませんでした。同社はいかにしてほとんどゼロの段階から製造業へのビジネス展開を成功させていったのでしょうか。イノベーション事業本部の営業・システム、それぞれのリーダーとして同社のFLEXSCHEビジネスを牽引するお二人にお話を伺いました。
『人作り』にも力を注ぐ山形のプライムベンダー
- フレクシェ
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まずは『株式会社エム・エス・アイ』(以下、MSI)の歴史や業務内容について教えてください。
- MSI 渡辺
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弊社は、ソフトウェア開発、ネットワーク構築、クラウド製品、ハードウェアの販売などを行っています。製造業だけでなく官公庁や建設業、流通卸業など幅広いお客様にソリューションを提供しています。
- フレクシェ
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御社ならではの特徴をおしえてください。
- MSI 大場
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創業当初から経営理念として「お客様に満足され、社員に喜ばれる会社づくりを目指す」ということを掲げていて、お客様へのアンケートを年一回、社員へのアンケートを年に一回行っているのですが、その結果からお客様満足度と社員満足度が非常に高いことが自慢の一つです。
- MSI 渡辺
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それと下請けはせず、必ずお客様と直接に仕事をするというのは弊社のこだわりの一つですね。ダイレクトにお客様と仕事をすることで、よりサービスの質を高めることに繋げていると思っております。
- MSI 大場
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人作り、ということにも力を入れており、いろいろな取り組みをしています。例えば、毎日行う全員参加のラジオ体操や朝礼、週一回の全員での清掃などがそうです。社内全体でのコミュニケーションも密で、横のつながりが強くまとまりのあるの会社だと思います。明るく元気で積極的な社員を育てることを会社として目指しています。
- フレクシェ
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たしかに、社屋に入ってからの社員の皆様の挨拶もすごく気持ちが良かったです。
- MSI 渡辺
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ありがとうございます。
- フレクシェ
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次にお二人自身の来歴を教えてください。
- MSI 渡辺
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私はもともと、前身の会社ではシステム技術者として勤めていました。そしてMSI創業のメンバーの一人として、その会社を離れたわけです。その後もシステム開発に携わっていましたが、システム系の営業力を強化するためにシステム営業マンに転身しました。そして会社として製造業に注力して事業を展開することになった際に、その営業を担当するようになりました。
- MSI 大場
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私は東京でコンピュータ関係の会社に五年勤めていたのですが、地元に帰ることになったのでそこを退職し、ちょうど創業したばかりのMSIに就職しました。官公庁や流通卸業などのシステム開発業務を担当していましたが、社内で製造業に特化した部門を立ち上げる際に現職に就きました。
- フレクシェ
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ちなみにお二人ともご出身は山形ですか?
- MSI 大場
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私は山形市の隣にある上山市の出身です。東京で勤めていた時期以外はずっとここに住んでいますね。
- MSI 渡辺
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私は生まれも育ちも山形市ですね。生粋の田舎者でございます。
- フレクシェ
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ご趣味なども教えて下さい。
- MSI 渡辺
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冬は控えていますが、シーズン中はゴルフばかりやっています。
- MSI 大場
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渡辺さん、すごいんですよ。プロ並みです。
- MSI 渡辺
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いやいや、そんなことないですよ!片手シングルハンデを目指して頑張っているところです。それと冬の間の趣味と言えば温泉ですね。東北は温泉地が多いですから、食事やお酒を楽しみつつ巡っています。
- フレクシェ
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山形もたくさん温泉地がありますよね。羨ましいです。大場さんはいかがですか?
- MSI 大場
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私の趣味はビリヤードですね。最近、御社の代表である浦野さんと一緒に撞かせてもらいました。最近は老眼がきつくて辛いのでもっと練習しないといけないですね。
事業の機軸を官公庁・建設業から製造業へ
- フレクシェ
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お二人が所属されている「イノベーション事業本部」は製造業を専門にした部署なのですね。いつごろ、どんな理由で御社は製造業を重視されるようになったのですか?
- MSI 渡辺
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15年前からですね。ちょうど官公庁や建設業が先細っていった時期で、しかも世間ではパッケージソフトが充実しつつあり、我々が得意にしていた受託開発業務の案件が少なくなっていくと予想したんです。そこでそれまでほとんど顧客がいなかった製造業に着目して新たに事業を展開することにしたんです。地方だと製造業の数は多いですが、地元の競合企業は製造業の仕事はほとんどやっていなかったので市場性があるということで会社として意志決定しました。
- MSI 大場
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現在でも製造業ではシステムらしいシステムが入っていないことが多いですからね。当時だと一部の大企業ぐらいだったと思います。それに現在ほど品種数は多くはなく、システム化をそれほど必要としていなかったのも製造業が未開拓の市場だった理由の一つだと思います。
- MSI 渡辺
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そこから時代とともに製品の小ロット化や受注生産体制への移行が進み、徐々にシステム化が求められていた時期だったのも我々が製造業に事業展開を決めた理由ですね。
- フレクシェ
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現在の御社の中で製造業関連の業務の割合はどのくらいあるのでしょうか?
- MSI 渡辺
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まだ三割程度です。ただ、今後は製造業部門に人員を増やす予定で、この先二年くらいのうちには五割までいくと思います。
- フレクシェ
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FLEXSCHEを取り扱っていただけるようになったきっかけはなんだったのでしょうか?
- MSI 大場
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当時、製造業のお客様から生産管理システムを求められていたのですが、課題を詳しく聞いていくと本当に必要としているのは生産スケジューラだな、と思いまして要求に沿うものを探していたんです。その中で選んだのがFLEXSCHEでした。
- フレクシェ
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FLEXSCHEのどこに魅力を感じていただけたのでしょうか?
- MSI 大場
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インターフェースが優れていると感じましたね。データ形式がCSVファイルで扱いやすいと思いました。それと他社にはないグラフィカルな動作も魅力でしたね。結果としてはそのお客様に選定いただくことができ、弊社としてFLEXSCHEを扱った最初の案件となりました。それで製造業の中にこういうニーズがあるということが明確になったので、より力を入れて展開していきました。
- MSI 渡辺
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我々は製造業という市場に新規で参入するわけですから、なにか光るものを持っていないと開拓できないと思っていましたので、そこにおいてFLEXSCHEは大きな武器になりましたね。生産管理システムが解決できる課題というのは決して多くないと思うんです。例えば生産性の向上や在庫削減といったことは生産スケジューラでこそ実現できるものです。しかも生産管理システムをご説明してもお客様にとっては他の製品となにが違うのかがわかりにくいのに対して、FLEXSCHEは短時間で大きなインパクトを与えられますから、営業としてもお客様の理解を得やすい貴重なシステムだと思っています。
- MSI 大場
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それとFLEXSCHEはお客さんの要望を私たちから伝えると、それを吸収してバージョンアップ時の機能強化に反映するのが早いのも良いですよね。
- フレクシェ
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私たちにとってもパートナーの皆さんが直接聞いたお客様のニーズを教えていただけるのはありがたいです。FLEXSCHEがよりよいツールになるために頑張っていきたいですね。渡辺さん、営業から見たFLEXSCHEの商材としての価値はいかがですか?
- MSI 渡辺
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デモをお見せすればほとんどの場合、すぐに興味を持っていただけますので営業しやすいソフトウェアだと感じています。しかもFLEXSCHEをきっかけに、「今の生産管理システムにも課題があって、一緒に提案してくれないか」というお話にもつながってきます。なので、FLEXSCHEを前提とした生産管理システムの納入なども今までに多数ありましたね。これまでにFLEXSCHEを36社42ライセンス販売しており、大きな売り上げを上げています。イノベーション事業本部の事業はFLEXSCHEのおかげでここまできたと言っても言い過ぎではないです。
- フレクシェ
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生産管理システムとセットになることが多いのですか?
- MSI 渡辺
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もちろんFLEXSCHEは単独でも価値のあるソフトウェアですが、生産管理システムとの連携によってもっと価値は高まりますから。生産管理システムの中にも工程管理の機能はありますが負荷を山積みして平準化していく方法では限界があり、実際のものづくりは時系列上での緻密な計画が必要です。多くの工場で行われているようなMicrosoft Excel®を用いた手作業での計画立案ではそんな緻密なものはできませんし、その上システムとの連動も難しいのでそれ以上の広がりは期待できません。FLEXSCHEは他システムとの連携によってシステム全体の価値を高めてくれる存在なのです。
FLEXSCHEを扱うにあたっての課題は
- フレクシェ
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今度はFLEXSCHEを扱っていて難しいと感じることを教えてください。
- MSI 大場
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お客様からこれを運用していくのは難しいと言われたことが何度かありました。計画立案業務の属人化を解消するのが目的の一つなのに、そのシステムに専任者をつけることになったら、そこがクリアになりませんからね。生産のやり方が変わればシステムも変えていかなくてはいけませんし、それをお客様自身で対応できるようになってもらうのが大変だなと感じます。そして、FLEXSCHEの導入を検討しているお客様もそこを不安に思うことが多いです。ですが、我々がサポートすることもできますし、あるお客様はFLEXSCHEを長期間利用する中で上手く業務に取り入れて、スケジューリングルールの変更さえご自身でやられているケースもあります。
- MSI 渡辺
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立ち上げ以降であれば、我々がサポートすれば解決する部分ではありますが、最も難しさを感じるのは立ち上げ時ですよ。お客様がFLEXSCHE導入に向けて集中し、専任の方を配置できる体制なのかどうかは導入の成功を左右しますね。
- フレクシェ
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FLEXSCHEに携わるエンジニアの育成はどうですか? 新たに製造業部門に配属された方でもすぐにシステムになじめるものですか?
- MSI 大場
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技術的な部分については、それほど大変ではないでしょうね。システムの素養があれば誰でもシンプルなケースのモデリングくらいはすぐにできると思います。しかし現実には単純なモデルで済むお客様は全くいません。結局のところ、FLEXSCHEの経験や製造業の知識がないと上手にアレンジしていくことはできないです。
- MSI 渡辺
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今後はノウハウもうまく伝達できるようにしていきたいので、後進のエンジニアたちのために構築した成果物をわかりやすい形で資産として残していくことが課題です。また他のパートナーさんとも協力して、様々な業種ごとのモデルの雛形を作ることができると良いですよね。
- MSI 大場
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技術交流ができるとそういった問題の解決にもつながっていくかもしれませんね。ノウハウを共有していくことでより効率的でクオリティの高い仕事ができるようになっていくと思います。
- フレクシェ
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弊社で行っているパートナー会にはそういった要素はありませんし、なにか新しい取り組みができるとよいですよね。現在、御社ではFLEXSCHEの売り上げが右肩上がりと伺っています。それは製造業全体が活況に入っていることが要因ですか?
- MSI 大場
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それはあるでしょうし、生産スケジューラ自体の認知度もかなり向上したこともあるでしょう。
- MSI 渡辺
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私は近年の働き方改革も理由の一つじゃないかと分析しています。計画担当者さんというのは膨大な時間をかけ、なおかつ業務も掛け持ちしていて大変ご苦労されていることが多いです。そこをなんとか省力化したい、という問い合わせをいただいたこともありました。
FLEXSCHEのさらなる展開の可能性
- フレクシェ
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大場さんは過去に海外で三件もFLEXSCHEの導入を行われているそうですね。
- MSI 大場
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そうですね。タイ、アメリカ、台湾でやりました。
- フレクシェ
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それは海外から直接お問い合わせがあったのですか?
- MSI 大場
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いえ、どこも日系のグローバル企業なのですが子会社の工場で導入実績があり、それをきっかけに関連会社に提案されて、海外への導入につながった格好です。
- フレクシェ
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三件とも、横展開での導入というのも珍しいお話ですね。
- MSI 大場
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製品が良いのでそれを認めて頂けたのだとおもいます。
- フレクシェ
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いえいえ、御社が素晴らしいお仕事をされたからだと思います。ちなみに、今後も海外でFLEXSCHEを販売する可能性はありそうでしょうか?
- MSI 大場
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海外の工場は土地面積が大きくシンプルなラインを作ることができていたり、大量生産品のみを製造していたりすることが多いですから、日本と違ってすべての工場でFLEXSCHEが有用というわけではないでしょう。ですが別の見方として、現地の企業を日本の工場からコントロールするためのツールとして活用できる可能性があると思います。実際、そのようなお問い合わせもありました。
- フレクシェ
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どういうことなのでしょうか?
- MSI 大場
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計画業務を日本で行って海外の工場に指示を出すことで生産の状況を見える化し、生産の効率化を図るということです。そういった役割をFLEXSCHEは果たせると感じていますので、国内だけでなく、海外への販売の可能性もあると思います。
- フレクシェ
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なるほど、そういった提案の仕方はたしかにありえますね。それでは最後に今後の目標について教えてください。
- MSI 大場
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私はFLEXSCHEが工場業務の自動化を進める役割を果たせると思っています。実際の事例として、ERPとFLEXSCHEと実績管理のシステムを連携させたことがありまして、そこでは計画業務の完全な自動化を実現できました。FLEXSCHEがスケジューリングすると、作業指示が現場の端末に表示され、なおかつ生産が進行すると実績をシステムが自動で収集し、FLEXSCHEに反映されるという仕組みです。IoTによって全ての生産情報がシステムと連携し、その情報を回していくエンジンとしてFLEXSCHEを利用することができるんです。近い将来、そういったツールとしての価値もFLEXSCHEが担えるように、インテグレーターの立場から頑張っていきたいと思っています。
- MSI 渡辺
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今後、FLEXSCHEは全ての製造業において必要とされるツールになると確信しています。営業当初に「生産計画で困ってないよ」と言われたところからも、今になって提案依頼をいただく件数が増えていますし、まだまだ生産スケジューラは求められていくソフトウェアだと思います。これからもお客様の満足を追求し、よりよいソリューションを東北の製造業の皆さんにご提供していきます。